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MORNING TALK

朝の心

“自己中人間”

2005.04.26
朝の心

 現代若者気質に「自己中人間」というのがあります。どうもすべてを自分中心の視点でしか捉えることができない、考えることもできないわがまま人間のことを言うのだそうです。そのような人間は他人の気持ちも分らないし、他人の立ち場に立ってものごとを考えることもできません。したがって、人を思いやったりすることもなければ、まして人の心の痛みなど分ろうはずがありません。ところが最近ますますそのような若者が増えつつあるというのです。本当にそうでしょうか?私にはとてもそうは思えません。私の毎日見ている子供達はみんなやさしい人間だし、私の知っている若者達は憎めない、気のいい者たちばかりだからです。私が養護施設で働いていた十数年前の話です。手のつけられない不良少女に出会いました。仲間達からは一目も二目も置かれている、いわゆるスケバンと言われる少女でした。人の迷惑など少しも気にせず、暴れ放題暴れまわっていましたが、ある時からぷっつり姿を見せなくなりました。数ヶ月たったある日のこと、仲間の一人が赤ん坊を抱えた彼女にばったり会いました。仲間は彼女に、「グループに帰ってきて、また一緒に楽しくやろうよ」としきりに誘いました。しかし彼女はきっぱり言いました。「自分は今、赤ん坊を持ってみてまわりの色々なことが良く見えるようになったの。以前の私は自分しか見えず、自分のことしか考えていなかった。でも今は一つ一つの表情の中に、この子が何を考え、何をほしがっているのかが見えるようになったの。だからゴメン!もうみんなのところには帰れない」私たちはこの学校でこれだけ多くの友とかかわり、人生を分かち合っています。その表情をしっかりと見つめているなら、「自己中人間」になれるはずがありません。

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