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MORNING TALK

朝の心

“PTSD”

2005.04.26
朝の心

 最近ニュースを見ていると、PTSDという言葉をしばしば耳にします。このPTSDは、阪神大震災の頃から注目を浴び、その後地下鉄サリン事件、和歌山のカレー砒素混入事件、最近では愛媛丸の事故や大阪の池田小学校での児童ら殺傷事件など、悲惨な事故や事件のたびに報道されてきました。このような悲惨な事故や事件は、犠牲者の心に自分は死ななくてよかったという安堵感よりも、深い深い傷を残します。今でも、眠れない夜が続いている人、毎晩のように悪夢にうなされる人、怖くて地下鉄に乗れない人、救急車の音を聞いたり、カレーの匂いを嗅いだりするたびにひどい吐き気をもよおす人など、多くの人が当時の心の傷からくる症状、つまりPTSDの症状に苦しんでいます。そして、彼らの心の傷はいつになったら癒えるのかも全く分からないのです。さて、わたしたちは、思いやりについて教えられるとき、「その人の身になって考えなさい」とか「自分がそうされたらどう思う」というような言葉をよく聞きます。しかし、たとえば相手がPTSDに苦しむ人だったらどうでしょう。彼らの心の深い傷は、多少想像はできても、とても理解できるものではありません。地下鉄が怖くて乗れないなど、普通の人にはなかなか理解できないものです。では、相手が普段接しているまわりの友達だったらどうでしょう。その人の身になって考えることは、先程よりはやさしそうです。しかし、注意しなければいけないのは、人の感じ方はやはりその人本人にしか分からないということです。自分が何気なく言った言葉、冗談で言った言葉、励ます意味で言った言葉であっても、それが相手を深く傷つけることもあります。人の悩みを聞いていると、そんなの大したことないよ、気にするなよ、と言いたくなることもあります。しかし、自分だったら平気なことでも、その人が傷ついているのであれば、自分がどうであれその人の心の現実を尊重しなければいけません。人間関係での悩みを抱える人が多いなか、私たちは自分の言葉や行動に気を配ることはもちろんですが、悩んでいる人の身になって分かったつもりになるのではなく、その人は自分とは違うことを頭に置き、じっくり理解に努めることが大切だと思います。

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