朝の心
“聞く力”
- 2005.04.26
- 朝の心
『ラヂオの時間』という映画のなかで、ラジオドラマのプロデューサーが次のように言うシーンがあります。「僕はラジオドラマが好きです。ラジオドラマには無限の可能性があるからです。」細かい表現は忘れましたが、それはこういう意味です。たとえば、映画やテレビドラマで宇宙を表現するためには、すごいセットを組んだり、コンピューター・グラフィックスを駆使したりして、監督のイメージに沿った宇宙空間を創り出さなければいけません。それに対し、ラジオドラマでは、一言「ここは宇宙です」と言うだけで、そこに一人一人のイメージする宇宙が広がっていくということです。たしかに、なるほどと思わせる言葉です。しかし、言葉が本当に無限の可能性を持つためには、いくつかの条件が必要です。たとえば、聞き手の側でいうと、言葉を聞き取る力、それを理解する力、そして聞いた内容をイメージとして膨らませる想像力などです。ところが、残念なことに、現代の日本人はこのような重要な力が落ちてきているのではないかという指摘があります。たとえば、バラエティー番組を見ると、面白いギャグには字幕が付いていたりします。しかも親切に字幕の大きさや色、動きなどで、どこが笑うポイントなのか見ただけで分かるので、聞き逃さないようにしっかり集中して聞く必要がなくなりました。ニュースのインタビューでも、字幕が付いていることが多くなりました。ある専門家たちは、こうした現象が日本人の聞く力を低下させていると言います。また、小説を読むよりもマンガを読んだりテレビや映画を見ることのほうを好む、という現象がイメージを膨らませる想像力をも低下させていると言います。もうじき夏休みに入りますが、夏休みの時間を利用して普段は聞き逃している自然の音に耳を傾けたり、人の話をじっくり聞いてみたりして聞く力を働かせてみてはどうでしょうか。きっといろんな発見があると思います。また、学校の図書館にはたくさんの良書がありますので、それも是非利用して想像力を鍛えてみてください。