朝の心
“翼のない天使”
- 2005.04.26
- 朝の心
「『翼のない天使』に会ったことがあるかい?」そう前置きして、フィリピン人の友達が、こんな体験を話してくれました。彼は大雨の中、バスを待っていました。フィリピンでは大雨が降るとすぐに洪水になり、ひどい交通渋滞が起こります。その日も、ひどい渋滞でバスがいつ来るかも分からず、彼はイライラしながら待っていました。彼のイライラにはもう一つ理由がありました。彼は教会での会議を終え、これからとても楽しみにしていた友達の誕生パーティーに行くはずだったのですが、この大雨と渋滞のせいで参加をあきらめざるをえなくなり、仕方なく家に帰るバスを待つことになったからです。そこへ、小さな男の子がやってきて雨宿りを始めました。手にナッツのかごとバラのブーケを抱えたその子は、貧しい身なりで、寒さに震えていましたが、目が合うとニッコリと微笑みました。私の友だちは、その男の子に興味をひかれ、話しかけました。その子は9歳で、両親と4人の兄弟と一緒に暮らしていること、学校に行きたいので道端でナッツやブーケを売る仕事を一生懸命にしていること、しかし、両親が病気がちなので自分が働いて4人の兄弟を養わなければいけないことなどを話してくれました。その少年と話をしているうちに、雨は次第に止んでいきました。雨があがると、その少年は私の友達から受け取った小銭をしっかりと握りしめ、にっこり笑って礼を言うと、ナッツと花を大事に抱え、また街の中へと消えていきました。その姿を見ながら、「この少年の抱えている問題に比べて、自分の問題はなんと些細なことだろう、それなのにどうしてあんなにイライラしていたんだろう」と恥ずかしくなったそうです。そして、彼はその少年が自分にとっての『翼のない天使』だったと言います。人生の中で、ほんの小さな出会いやまわりの人のほんの一言が、自分に本当に大切なことを教えてくれたり、気付かせてくれることがあります。そんな『翼のない天使』たちに気付く目をもつことができれば、人生はさらに豊かになっていくことでしょう。