朝の心
“forgive us, as we forgive…”
- 2005.04.26
- 朝の心
バリ島での爆弾テロ事件やアメリカでのイラクに対する武力行使の承認など、この数日間、世界がどんどん平和から遠ざかっていくような暗いニュースが続いています。世界中の人々が、共に支えあって生きていく平和な世界を実現することは、はかない幻想に過ぎないような気さえしてきます。しかし、一月ほど前に、私はある報道番組の中で、一つの希望に満ちたメッセージに出会いました。それは、アメリカでの同時多発テロ事件からの1年間における、アメリカ人の心の変化を追ったものでした。ワールドトレードセンター跡地である「グラウンドゼロ」には、事件当初からたくさんの寄せ書きがされています。当初寄せられていたメッセージには、テロリストに対する報復を求める声、アメリカ人の団結を呼びかける声がほとんどでした。しかし、あれから1年。寄せられてくる声の中に、怒りに満ちたメッセージはだんだんと少なくなり、平和を求めるメッセージが大半をしめるようになってきたというのです。そんな中で、1つのメッセージに、私は大変心を打たれました。それは“forgive us, as we forgive”『私たちをゆるしてください。私たちもゆるしますから』というメッセージでした。ここに本当のゆるしがあります。テロという無差別の暴力によって罪のない2797人もの命が犠牲となったわけですが、このメッセージは、平和の実現に向けてその一方的な暴力をただゆるすというのではなく、自分たち自身を振り返り、長い歴史の中で自分たちアメリカ人が相手を傷つけてきたことを深く反省し、謝罪しているのです。自分たちは悪くないけどゆるしてやろう、という態度は本当のゆるしではありません。本当は自分たちこそゆるされるべき存在だと気づくことが本当のゆるしへとつながるのです。私たちも、自分のことを振り返ってみましょう。私たち一人一人が「自分は悪くない」という考えから抜け出し、周りの人に本当のゆるしの心を持つことで、平和は私たちの周りから少しずつ実現していくのではないでしょうか。