MORNING TALK
朝の心
銀河鉄道の夜
- 2005.06.17
- 朝の心
高校では,毎週月曜日の朝の放送で本の紹介があります。先日は,宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」が取り上げられました。有名な小説ですが,みなさんは読んだことがあるでしょうか。物語はファンタジーの形で語られますが,本当に幸せな生き方とはどんなものなのだろうか,というとても深いメッセージがこめられた小説です。
さて,今日はこの話の中に登場するサソリの話を紹介したいと思います。ある野原に一匹のサソリがいました。このサソリは,毎日小さな虫などを殺して食べていました。ある日,サソリはいたちに見つかって食べられそうになります。サソリは一生懸命逃げました。そして,逃げていくうちに突然目の前に現れた古い井戸に落ちてしまいます。そして,サソリはどうにもはい上がることができず,溺れ始めます。サソリは祈りました。それは,どうか助けてくださいという祈りではありませんでした。
「ああ,私はいままでいくつのものの命をとったか分からない,そしてその私が今度いたちにとられそうになったときは,あんなに一生懸命逃げた。ああ,どうして私は私のからだをだまっていたちにくれてやらなかったろう。そしたら,いたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてず,どうかこの次にはまことのみんなの幸せのために私のからだをお使い下さい。」
そのとき,さそりのからだは真っ赤な美しい火となり,それからずっと夜の闇を照らし続けたのでした。