MORNING TALK
朝の心
カント
- 2005.06.27
- 朝の心
イマヌエル・カントという18世紀の哲学者がいました。カントの哲学はとても難しく,ロシアの文豪トルストイも「私はカントを読んだ,そしてほとんど何も分からなかった」と言っているほどです。もちろん今日,カントの哲学について話すわけではありません。
カントは80歳で亡くなるまで,自分が生まれた町から一歩も外へ出なかったそうです。毎朝5時きっかりに起きて書斎に入り,紅茶を2杯飲み,パイプを一服吸うとすぐ机に向かいました。それから2時間,大学の講義の準備をしたり,原稿を書いたりします。午前中は大学の講義をして,自分の部屋で「哲学」をします。午後1時きっかりに昼食をし,4時か5時に再び仕事,夕方にはいつも決まった友人の家を訪れ,7時きっかりに散歩に出ます。その時間が毎日ぴったりなので町の人はカントが通ると時計を合わせていたほどです。散歩から帰り,読書をして,10時ぴったりに寝ます。
これがカントの青年時代から死ぬまで続いた生活パターンでした。何と変化のない,面白くない生活なのかと思うかもしれませんが,カントの哲学はまさにこの規則正しい生活から生まれました。このような生活はいつも決まったことなので何の努力もいらないように思えますが,実際は強靱な忍耐力と意志の力が必要なのです。自分で自分を律するというすさまじい意志の強さがカントを偉大な哲学者にしたのです。カントほどでなくていいですが私たちも強い意志をもつ努力をし,規則正しい生活を心がけたいと思います。