朝の心
我が人生最後の幸福
- 2005.07.12
- 朝の心
小学校3年生の時の話です。私の小学校の裏には,99段の階段があり,毎日そこを降りて学校に集団登校していました。春というにはまだ肌寒い,ある朝の登校中にその奇跡は起こりました。いつものように「階段駆け下り競争」を始めた私たち。スタートダッシュで出遅れた私は焦ってしまい,駆け下りて5歩で足がからまりました。その後は,ご想像通り,そのまま,ゴロゴロと残りの94段を猛烈なスピードで転がり落ちて行きました。初めにきれいな前転宙返りをし,途中でランドセルが脱げ,その後,追い抜いた友達のビックリした顔,飛んで行く自分の靴,なぜか脱げてゆくジャンパー。全てがスローモーションでした。最終的に,私はどうなったと思いますか?全身血だらけ,どころか,お気に入りの筆箱が壊れただけで,なんと無傷でした。しかも,最後のフィニッシュで,ふたたび前転宙返りで見事に着地し,尻餅をついて止まったのです。今すぐ,時代劇の切られ役をつとめられるくらいの見事な階段落ちでした。たぶんこれを聞いた皆さんは「うそ〜!」「またまた〜!」と思ったでしょうね。この出来事は,私にとってお気に入りの筆箱が壊れた苦い思い出としてよりも,94段を転がり落ちて,無傷でいた奇跡の思い出として心に残っています。
先日,ある講演会でこんな言葉を聞きました。「いい思い出を持つことは,人生の最後の幸福を決める。」
私たちの生活は毎日ドラマのような出来事があるわけではありません。ドラマチックな展開を求める余り,常に自分の人生を退屈でつまらないと思っていませんか?よく,見て下さい。あの階段落ちのように,平凡な暮らしの中で,平凡な身に起こる小さな奇跡があるはずです。
どうせなら,常にマイナス思考で物事をとらえ,人生の最後まで,苦しく,つらい思い出に浸って,愚痴るよりも,小さく些細なことだけれども,たまに起きるその小さな奇跡に気が付いて,楽しく,いい思い出に,話を弾ませられるような人生を過ごしたいと思います。