MORNING TALK
朝の心
完成された人
- 2005.07.15
- 朝の心
完成された人というのは存在するのでしょうか?「能」歌舞劇の大成者である世阿弥という人が次のような言葉を残しています。「是非の初心忘れるべからず。時々の初心忘れるべからず。老後の初心忘れるべからず。」ここでいう,初心とは未熟,未完成という意味です。是非の初心とは,若い頃の未熟さ,時々の初心とは壮年期の未熟さ,老後の初心とは老年期の未熟さの事です。
世阿弥は河原者といわれた低い身分の出でしたが,優れた才能と努力によって,かつては乞食にしか似つかわしくないと馬鹿にされていた「猿楽」と呼ばれるある種の音楽を,当時の最高の芸術形式にまで高め,宮廷の貴族たちにも大きな影響を与えました。
己の未熟さを知るということは,常に完成に向かって成長してゆく無限の可能性を持っていることに気付くことでもあります。ドンボスコも若い頃から気性の激しい人でしたが,彼はそれを不断の努力と高い理想によって柔和と謙遜にかえることができました。さて,中学生,高校生の皆さんには,これから新しい自分,完成された自分に成長してゆく無限の可能性が与えられています。皆さんが日々,上を目指し,努力を惜しまないならば,今日もまた一歩,完成された自分に近づく事ができるでしょう。