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MORNING TALK

朝の心

3つの願い

2005.09.27
朝の心

 2001年8月,アメリカ・メリーランド州で,1人の少年が病床で死を迎えようとしていました。病気は,重い先天性筋ジストロフィー。成長と共に筋肉の萎縮が進行し、歩行や運動が困難になる病気です。彼はわずか11歳でしたが,医師は母親にあと2〜3日もつかどうかだと宣告します。
 少年の名前はマティ・ステパネク。かろうじて意識のあった彼に,医師は「何かほしいものはあるかい?」と最期の願いを聞きます。マティ君は『3つの願い』と答えます。この3つの願いとは,6歳の時から願っていた「詩集を出版する」「テレビに出て詩を朗読する」「カーター元大統領に会う」という途方もない夢でした。詩は,マティ君が3歳の時に兄ジャミーを自分と同じ病気で亡くして以来書き溜めてきたものです。なぜ詩集を出版したいのかと聞かれたとき,マティ君は,これを出版してたくさんの人に自分の詩を読んでもらって,世界中の戦争を止めさせたいのだと答えます。戦争では多くの人が死ぬ,自分はお兄ちゃんが死んで悲しかったからだと。そんなマティ君にとって,エジプト・イスラエルの和平を合意させたジミー・カーター元米大統領は憧れのヒーローでした。だからこそ,彼に会うことが3つ目の夢だったのです。
 さて,この3つの夢を母親から聞いた医師は,せめて1つでも叶えてあげたいと,病院中の手の空いている人を集め,カーター元大統領の事務所と地元の出版社に事情を訴えます。しかし,カーター氏はスケジュールの関係で見舞に訪れることは無理,出版社にも,無名の少年の詩を出版することにメリットはないと,断られ続けます。
ところが,医師たちの懸命の努力が次々と奇跡をよびます。次の日,カーター元大統領が集中治療室のマティ君に電話をかけてくれます。さらに,VSPブックスという小さな出版社が,マティ君の願いを叶えるために,詩集を出版してくれることになります。そして,通常2週間かかる作業を,スタッフの不眠不休の作業によって,わずか1週間で仕上げ,病床のマティ君に届けてくれたのです。
 そして,もう1つの奇跡。マティ君が命をとりとめたのです。マティ君は今でも詩を書いたり,平和のためのさまざまな活動を続けています。いつか朝の心で,彼のすばらしい詩を紹介したいと思います。

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