MORNING TALK
朝の心
ハンセン病
- 2006.02.09
- 朝の心
先日私は、ハンセン病の患者さん方と会い、話を聞く機会がありました。
患者といっても病気は完全に治っています。しかし、体には今でも大きな後遺症が残っています。視力は弱り、顔はただれ落ち、手足の指はなく、あったとしても曲がったままの状態です。
ある一人の患者さんがこんな話をしてくださいました。
「私の兄はハンセン病で施設に入っていました。そして、私も14歳でハンセン病であることがわかり、施設に入ることになりました。私が入院した時、すでに兄は危篤状態でベッドの上で寝たきりでした。私は、ベッドの上の変わり果てた兄が、本当に自分の兄であるのか判別できませんでした。そして、そんな兄がこんなことを口にしたのです。『今晩一緒に過ごしてくれないか。』私は、そんな兄の言葉にただ恐怖を覚え、逃げることしか頭にありませんでした。『今日は疲れているからゆっくり一人で休みたい。』そう答えると。兄はすこし淋しそうでしたが、私にはこうする今年か頭にありませんでした。次の日もまたその次の日も兄は私に問いかけたのでした。私はその後も何とか言い訳を見つけ、いつもその場を逃れました。そして数日後、兄は一人ベッドの上で冷たくなっていたのです。
後になって私は、このときの自分のしたことをとても後悔しています。肉親であり、しかも、同じ病気で苦しんでいたのに、私の方から兄を見捨ててしまった。兄と一緒にすごすことができなかった。兄を兄弟として、人として、見ることができなかった。」
このような話を真剣なまなざしで話してくださいました。
今でも、私たちの周りには、ハンセン病の後遺症を抱えながら生きている方が数多くいます。この体験を通して、私はハンセン病のことを少し身近に感じることができました。