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MORNING TALK

朝の心

タラントン

2006.05.16
朝の心

 『新約聖書』の中に,入学式でも朗読された「タレント(タラントン)のたとえ」という有名な話があります。旅に出る主人が,3人の僕たちにそれぞれ1タレント,2タレント,5タレントを預けていく話です。このたとえ話では,5タレントと2タレントを預かった僕たちは,それぞれ商売をして預かったお金を倍にして主人に返すのですが,1タレントを預かった僕は,それを土に埋めておいてそのまま主人に返してしまい,主人の怒りをかうことになります。なんだかかわいそうな気もしますし,そもそもタレントに差があることに不平等を感じるかもしれません。
 ところで,トリノ・オリンピックで活躍したフィギア・スケートの村主章枝さんは,あるインタビューの中で,氷の上に一人立って世界中が注目する数分間を独り占めする気持ちを尋ねられ,こんなふうに答えました。
「私は特にすごい宗教とかではないんですけど,『運命』とかそういうものを感じます。一人一人世界で生きていて,それぞれがその人だけのいろんな運命を持っていて,そんな中で神様みたいな人は,私には『リンクの上でたくさんの人に喜んでいただけるようなスケートをしなさい』って言ってスケートを与えて,そういう場に立たせてるんだと思うんです。だから,そういうチャンスにめぐり合う人生にしてくださったことにすごく感謝しています。ただ,そういうものを信じるがゆえに私自身は,あの時にもっとこうしてれば今違ったのに・・・っていうふうに過去にとらわれてしまうこともあります。でも,本当に強い人間は運命を嘆かないんです。運命や人生は自分で切り開いていくものだと思うし,チェスとかと同じでどうゲームしていくか,どう築いていくかなんです。過去とか運命とかを嘆かないような強い人間になることが私の目標です。」
 村主さんの言う『運命』は,そっくりタレントに置き換えられるような気がします。そして,自分だけに与えられたタレントに感謝し,それを活かしながら切り開いていく生き方こそ,タレントを倍にしていく生き方なのではないでしょうか。

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