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MORNING TALK

朝の心

もののあわれ

2006.05.20
朝の心

わたしたち日本人は命短く散ってゆく桜の花に「もののあわれ」を感じ、さらにそこに人生を投影し、ほかの花とは別の美しさを見出します。日本人はわずか数日だけ咲いて散ってゆく桜の花に人生のはかなさを観るような、世界でも珍しい情緒豊かな民族です。
アメリカ・ワシントンD.C.のポトマック河畔も桜で有名です。これは明治の終わりに日本から送られた約3000本の苗木が90年後の今みごとに成長し、人々の目を愉しませているものです。しかし毎年開かれている桜祭りでみごとな桜の花を見ることができるアメリカの人々が、散ってゆく桜の花に日本人のような「もののあわれ」を感じることはあまりないのではないでしょうか。
「もののあわれ」などというと、古典の教科書にしか出てこないような古くさいものだと感じるかもしれませんが、わたしたち日本人が先祖から受け継いできた、とても貴重な、世界に誇る感受性なのではないかと思います。そしてその感受性が今、少しずつ失われてきている気がします。
目に見えるもの、理屈で説明できるものだけではなく、たとえ言葉で説明できなくても、わたしたち日本人の中に脈々と流れている感受性を育てる責任が、ひとりひとりにはあるのではないでしょうか。

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