MORNING TALK
朝の心
母の教え
- 2010.06.04
- 朝の心
先日,ある年配のシスターからこんな話を聞きました。シスターが幼い頃,弟たちが友達とけんかをして泣いて帰ってくると,シスターのお父さんは「負けているやつがあるか,行ってやっつけてこい」と言って怒っていたそうです。しかし,そういうときにはいつもシスターのお母さんが「負けたほうが良い。人が鬼を出すなら,こっちは仏を出すもの」と弟たちを諭したそうです。当時,シスターたち兄弟は,その言葉の意味がよく分かりませんでした。けんかは負けたほうが良い。相手には鬼ではなく仏を出せ。どちらも世間の常識とは異なる勧めです。しかし,よく考えてみると,友情とか信頼を築くために大切なことはけんかに勝つことではありません。けんかに勝って力で周りの人を自分に従わせても,心から信頼のできる相手をつくることができなければ,その人はきっと孤独で寂しい生き方をすることになるでしょう。シスターのお母さんは仏教徒でしたが,シスターは後にこの教えがすべてを人のためにささげ尽くしたイエスの生き方そのものであることに気づき,いまでもこの言葉を大切にしているそうです。
さて,学校での生活が安定してきたこの時期には,少しずつ友人関係のトラブルが生じてくるかもしれません。そのようなときに,この「人が鬼を出すなら,こちらは仏を出せ」という言葉を思い出してほしいと思います。もちろんすぐに実行できるような簡単なことではありませんが,相手への思いやりを忘れない姿勢を持ち続けることは,きっと人間関係の改善に役立つことでしょう。