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MORNING TALK

朝の心

誰かのために

2012.02.23
朝の心

シカゴとサンフランシスコを結ぶ大陸横断鉄道の機関主たちはみんな同じマスコットを持っていました。それはプレーリー大平原の中に一軒、鉄道線路に近く建っている農家の娘エレンでした。シカゴからミシシッピー川を渡り、見渡す限り畑ばかりで家影まばらな緑の大平原を行く機関主たちにとっては、戸口で列車に向かってかわいいモミジのような手を振る七つの少女の姿が何よりの慰めでした。ところが、ある日を境に、いつも手を振ってくれる彼女の姿が見えなくなりました。機関主たちはエレンに何かあったのではないかと心配し、仲間と相談して彼女の家に近いミルトン駅から彼女の様子を調べに行ってもらうことにしました。エレンはやはり病気でした。しかも明日をも知れぬ重い病気にかかっていました。彼女の病気を救う方法は一つしかありませんでした。それは設備の整った病院に入れることです。機関主たちは額を集めて相談しました。そして少女のために自分たちでできることをしようと決めました。まず義捐金を集め、シカゴ大学の附属病院で治療を受けられるよう交渉しました。すべてがうまく準備できた時、大きな難題にぶつかりました。どのようにして少女を病院まで搬送するかです。機関主たちは大平原の何もない所に列車を止めるしか方法がないと考えて、会社に平原の中に臨時停車する許可を願いました。このことを聞いた会社は「人命は何よりも尊い。そういうことなら会社でも一等寝台車を特に連結させよう」と答えてくれました。こうして急行列車の最後尾に連結された一等寝台車は、エレンを家の前で乗せると一路シカゴに向かったのです。
機関主たちの愛情が少女エレンを救ったのです。私たちはいつでも、誰に対しても、常にこうした愛情と善意を持ちたいものです。

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