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MORNING TALK

朝の心

最期の笑顔

2013.06.14
朝の心

 東日本大震災の津波で亡くなった方の中には,遺体が激しく損傷していたり,苦しい表情を浮かべたまま亡くなっている方も多く,遺族にとってそんな状態の家族と対面しお別れするのは,本当に苦しくつらいことでした。そんな被災地の遺体安置所で活動されたのが,復元納棺師という特別な技術と資格を持つ笹原留似子さんでした。笹原さんは,被災地を回って300人以上の傷ついたご遺体をボランティアで復元し,生前の表情,それもその人らしい笑顔に戻すという特別な作業を行い続けました。そして,笑顔に戻ったご遺体と遺族の別れの場面に立ち会い,その家族だけの大切な深い最期の時間を後にスケッチブックに書きとめました。復元した一人ひとりの顔を思い出しては似顔絵を描き,そしてその家族の最期のひと時を短い言葉で書き添えています。
 その中に,亡くなったお母さんと男子高校生のこんな別れの場面があります。
「こんなことになるなら,あの朝,母さんとケンカするんじゃなかった。『いつもありがとう』って言えばよかった。息子さんが泣いた。 『お母さんだもん。あなたを世界一愛しているお母さんだもん。あなたの気持ちは,お母さん,全部分かってくれてると思います』 私とお母さんは同じ歳。きっとお母さん,今,あなたを抱きしめてくれているはずだよ。」と。
 思春期のみなさんにとって,日頃から家族への感謝を口にするのは難しいことだと思います。しかし,数年後,数か月後には親元を巣立つみなさんにとって,家族に「ありがとう」ときちんと伝える機会は,意識して行わなければ実は意外と少ないのかもしれません。日々の「おはよう」「いただきます」「ごちそうさま」「行ってきます」「ただいま」「ありがとう」「ごめんなさい」,そういった言葉を大切にし,心をこめて伝えていきたいと思います。

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