朝の心
黒田官兵衛の人生最大の策とは
- 2014.01.23
- 朝の心
今年のNHKの大河ドラマでは,黒田官兵衛が取り上げられています。黒田官兵衛といえば,歴史上秀吉の参謀として知られ,有名な中国大返しをはじめとして,秀吉の天下取りの陰には,常に官兵衛の戦略・戦術上の的確な助言があったと言われています。時の流れを見定める確かな目,外交や交渉術,人の心を読み,つかむ力,カリスマ性…さまざまな才能に恵まれていた官兵衛は,当然のごとく家臣からの尊敬を一身に集めていました。
しかし,彼は晩年,関ヶ原の戦いから亡くなるまでの3年半ほどの間,次第に別人のようになっていきます。人に対して優しかった官兵衛が,急に愚痴っぽくなり,短気になり,周りの人に怒り散らすようになっていったのです。当然,家臣たちの心も官兵衛から離れていきました。さすがの官兵衛も,年齢には勝てなかったと周囲の人間も息子の黒田長政も思いました。
しかし,これこそが官兵衛の人生における最後にして最大の策だったのです。当時の官兵衛は,長政に跡をゆずり隠居していましたが,多くの家臣たちが表面上息子の長政に従っていても,本当に尊敬しているのは未だに自分であることを見抜いていました。ですから,もし今の状況で自分が死んだら,家老たちが長政を侮って抑えがきかなくなるなど,息子と黒田家は大きな危機を迎えることになるだろう。そう予測した官兵衛は,愛する息子のために自らが悪者になって,家臣の気持ちを自分から長政に向けさせようとしたのです。そして,この策は見事に当たり,官兵衛の死後,息子長政は家臣たちをしっかりと束ね,五十二万石の黒田家を立派に切り盛りしていきました。
さて,人から嫌われてうれしく思う人などいません。官兵衛の晩年は,きっとつらい思いも多かったことでしょう。それでも,愛する人のために捧げられた彼の晩年は,数々の功績以上に光り輝いていると思いますし,彼自身納得した幸せな人生だったのではないかと思います。