いま，世界中で内戦，テロ，犯罪，殺人など悲しいニュースが絶えません。なぜ戦争はなくならないのでしょうか。なぜ人は憎み合うのでしょうか。しかし，亡くなられた後藤健二さんのお母様は，次のように言われました。「今はただ，悲しみ悲しみで涙するのみです。しかし，その悲しみが『憎しみの連鎖』となってはならないと信じます。『戦争のない社会をつくりたい』『戦争と貧困から子どもたちのいのちを救いたい』との健二の遺志を私たちが引き継いでいくことを切に願っています。」と。
では，平和を築くため，憎しみの連鎖を断ち切るために，わたしたちには何ができるのでしょうか。マザー・テレサが日本に来られたとき，「どうしたら平和な戦争のない世界がつくれますか」と高校生に問われ，マザー・テレサはシンプルにこう答えました。「家庭を大切にしてください」と。家庭の中が，笑いや思いやりに満ちていれば，争いや憎しみが連鎖することはないというのがマザー・テレサの信念でした。
そしてもう一つ。平和はゆるしです。ゆるす気持を持つことで，憎しみの連鎖は止められます。しかし，人はなかなか，ゆるす気持をもつことができません。マザー・テレサは，「自分も神様にゆるされているのだから，相手のことをゆるそう」と考えました。自分もたくさんの弱さをもったゆるされるべき存在であることを深く自覚することで，多くの困難な状況においても，マザー・テレサは愛とゆるしの心をもつことができたのでしょう。家族を心から大切にすること，自分も弱い存在だと認め周りの人を受け入れ大切にすること，それこそが平和への第一歩なのだと思います。