朝の心
至誠にて動かざる者は、未だこれあらざるなり
- 2015.09.12
- 朝の心
高校文化祭のゲスト講演に来て下さった裕輔さんの歌は、心に深く響くものでした。それは歌が上手だからでしょうか。メロディーがきれいだからでしょうか。もちろんその通りですが、私自身は、富永さん自身のまっすぐでひた向きな気持ちからくるものだと感じました。その強い気持ちが、テクニックとしての上手さ以上の感動を、聴く人の心に届けてくれるのでしょう。まさに“heart to heart”です。
東京ディズニーランドを開設するにあたって、海を埋め立てなければなりませんでした。そこには、地元の漁師さんたちにいかに納得してもらうかという大きな課題がありました。関係する漁師さんの数は約1700人。そこで担当者が取った方法が、漁師さんたちとお酒を酌み交わし腹を割って直に話をする、というものでした。海を埋め立てるために漁業権の一部を放棄してもらうには、ひたすら頭を下げて誠意を示し、自分を信用してもらうしかない、と担当者は考えたそうです。毎晩のように一人ひとりとお酒を酌み交わして気持ちを伝え、心をこめてお願いしました。そうして迎えた漁業組合の総会では、ディズニーランドの建設に満場一致で協力することになったのです(『大切なことに気づかせてくれる33の物語と90の名言』参照)。
吉田松陰が残した有名な言葉に「至誠にて動かざる者は、未だこれあらざるなり」というのがあります。もともと中国の孟子の言葉で、「精一杯の誠意で相手に接すれば、それで心を動かされない人はいない。すなわち人を動かそうと思ったら、真心を持って精一杯の心で接するべし」という意味です。
時に私たちは、人と関わる時、どこか計算していたり損得を考えていたり、あるいは自分の気持ちをごまかしていたりこびへつらったりしていることがあるかもしれません。そんな関わり方では、結局は話がこじれたり、人間関係がギクシャクしたりするものです。誠実な心で接することこそが、最終的には人を動かし、自分を伝えることができ、良い関係を築けるのだと思います。