朝の心
自己責任
- 2016.06.10
- 朝の心
先日,高校3年生のあるクラスに,大学時代に借りた奨学金を返すことができず自己破産してしまう人を特集した番組を見せました。大学で真面目に勉強し,保育士になるという夢をかなえたのに,給料が安く,とても奨学金を返すことができないというのです。そんなふうに自己破産していく人たちが年間1万人もいるというのですから,本当に衝撃です。
その番組の中でわたしは1つの言葉に違和感を覚えました。それは,奨学金を貸している側の「返せずに破産するのは『自己責任』」という言葉です。この「自己責任」という言葉を聞くたびに,わたしは怖さを感じます。ISに捕らえられた後藤健二さんを「危険だと分かっていて入国したんだから自己責任だ」としたり,日本人の6人に1人が貧困状態だと聞いても,選ばなければ仕事はあるはずなのに働かないんだから自己責任だとか,シングルマザーが仕事を3つも掛け持ちして必死に子どもを育てていたり,貧困家庭の子どもが親に気を遣って塾に行けずに入試で失敗しても「自己責任」。いつから日本は,弱い立場の人を思いやることのできない心の貧しい国になってしまったのでしょう。おそらく「自己責任」と口にする人たちは,自分はすべて自力で今の地位を築いてきたのだと思っているのでしょう。
パナソニックの創業者松下幸之助さんは,入社面接で必ずこう質問したそうです。「あなたの人生は,今までツイてましたか?」と。そして,「すごくツイてました」という人を全員採用したそうです。なぜでしょう。会社にツキを呼び込もうとか,そんな理由ではありません。ツイていると感じる人の心の奥底には,今の自分は自分の力だけでここまできたのではないという周りの人への感謝があるというのです。この謙虚さを大切にし,今度は自分が困っている人に手を差し伸べる人になりたい,そんなふうに思える人でありたいですね。