MORNING TALK
朝の心
美しい生き方
- 2016.06.10
- 朝の心
「絆」「つながろう」「忘れない」。5年前の東日本大震災の後にたびたび使われた言葉です。被災された方々と共に苦しもう,つながろう,支え合おう,そんな空気が日本中にあったと思います。しかし,わたしたちの善意の言葉が,被災された方を傷つけたこともありました。「がんばってください」「お気持ちはわかります」「絶対に明日は来ます」こんな言葉が,実は被災者の胸には空しく響いたと言います。相手のことを思いやることが大切だということは,わたしたちが子どもの頃から教わってきたことです。しかし,本当に相手のことを理解し思いやるというのは,そんな生易しいことではないのです。ひょっとすると,思いやったつもり,何かをできたつもりの自己満足に過ぎないのかもしれません。
しかし一方で,そればかり心配していたら,何もできなくなってしまうのも事実です。では,いったいどうしたらよいのでしょうか。作家の遠藤周作さんは,こんな言葉を残しています。「人間は,みんなが美しくて強い存在だとは限らないよ。生まれつき臆病な人もいる。弱い性格の者もいる。メソメソした心の持ち主もいる・・・。けれどもね,そんな弱い,臆病な男が自分の弱さを背負いながら,一生懸命美しく生きようとするのは立派だよ。」と。熊本地震に際し,被災者のために何かしてあげようという気持ちを出発点とするのではなく,できる限り情報を収集し,被災者の気持ちを精一杯思いやることから出発し,こんな自分でも何かできる人でありたいと願い行動すること,そして常に自分の行動を相手の立場で反省できることが,真の美しい生き方ではないか,そんなふうに思います。