朝の心
相手が愛されると感じるまで
- 2016.06.23
- 朝の心
「幽霊の話をすると、本当に幽霊が出てくる」という話を聞いたことがありませんか。本当かどうかわかりませんが、そんな話の背景には、古くからの言霊思想があると言われています。言霊思想とは「言葉にすると、それが現実に起こる」という考えです。「縁起でもないことを言わない方がいい」というような表現は、その思想に由来しています。
一方で、危険や失敗を避けるために、時には耳の痛いことや、あまり聞きたくないことでも言わなければならないことがあります。たとえば自転車事故についてです。最近たびたび全校集会やホームルームなどで、自転車走行についての指導があります。「もうわかっている」「またその話か」と思うかもしれません。それでも失敗してからでは取り返しのつかないことだからこそ、どう思われようとも言い続けるのです。
聖書には預言者という存在がよく出てきます。預言者たちは、神の道から外れてしまうイスラエルの民に、神に代わって耳の痛いことを言い続けます。そのためイスラエルの民は、自分たちに不都合なことばかり言う預言者を迫害します。ところが最終的に、耳を傾けなけなかった者たちは滅びへの道をたどっていくのです。
私たちは日頃から、相手が気分よく感じる言葉を互いにかけ合っていたいものです。たとえば「ありがとう」「頑張ろう」「大丈夫だよ」などは耳にすると心地よく、できるだけ多く使いたい言葉だと思っています。しかし心から相手のことを思うのならば、時には耳の痛いことを言わなければならない場合もあります。今年の学院の目標は、「愛するだけでは足りません。相手が愛されていると感じるまで愛してください」というものです。自分が放つ言葉が、時には不快な気持ちにさせたり、誤解を抱かせたり、理解されなかったりするかもしれません。しかし真剣に相手に向き合い、大切に思う気持ちがあるからこそ、言わなければならないこともあるのです。それは時に、相手の心に届くまで時間がかかることもありますが、気持ちが通じた時、それまで以上に深い信頼関係が築かれていることに気付くはずです。私たちは時々、「相手が愛されていると感じる」言葉や行いが本当にできているかどうか、ふり返ってみましょう。そして相手からの気持ちのこもった言葉や行いを素直に受け止められているか、思い返してみましょう。
写真は華道同好会
2−1 押川凛さんの作品