朝の心
ピエタ像
- 2016.11.23
- 朝の心
ピエタ像という有名な大理石の彫刻が、バチカンのサン・ピエトロ教会にあります。作者はミケランジェロです。ピエタとはイタリア語で「あわれみ」とか「なぐさめ」という意味で、十字架から降ろされたイエス・キリストを抱きかかえる聖母マリアの姿を表した作品です。そのピエタ像をモデルとしたモザイク画を、高校生の有志が今週行われる慰霊祭に向けて製作してくれました。
このピエタ像の姿を見ているといろいろなことが黙想されます。イエスが人々から人気を集めていた時「命までも捨ててあなたについていきます」と豪語した弟子たちは、イエスが捕まるとほとんど逃げ去ってしまいます。ほんの数日前までイエスを王として熱狂的に迎えた群衆は、180度態度を変えてイエスの十字架刑を支持します。ついにはイエスを死刑まで追い込んだ当時の宗教指導者たちは、十字架につけられたイエスを罵ります。そんな状況の中で、我が子が磔にされた十字架のもとで佇む母マリア。やがて息を引き取ったイエスは十字架から降ろされ、母マリアに抱きかかえられるのです。実の息子の死を目の当たりにし、その亡骸を抱きかかえる時、母親としてどのような思いであったでしょうか。
実はこの姿を彫刻にしたミケランジェロは、その聖母の姿を苦労と悲しみで年を重ねた老婆としての姿ではなく、若い娘のような姿として表現しました。それは「死」という深い悲しみを越えて、「死」を通して導かれる復活信仰、つまり死は終わりではなく、死を通して実現されていく神の偉大な働き、恵みを信じる信仰者としての姿を、若い聖母として表しているのです。
私たちの人生では死を避けることができません。しかし、死を終わりとしてみるのではなく、死を越えて働かれる神の恵みと導きを信じて、今の人生を力の限り生き抜いていくことが大切だとイエスは教えます。その意味で慰霊祭では、この一年間で亡くなられた方々の永遠の安息とご家族の上に神の必要な恵みと慰めがあることを祈ると同時に、私たち自身が「死」を通して「生きる」ことを改めて考える機会としてもらいたいと思います。
※慰霊祭に飾られたピエタ像
(高校2年生有志製作)