朝の心
「難有り」は「有難い」
- 2017.01.13
- 朝の心
飛行機やバスなどで移動するとき、皆さんは何をしていますか。読書をしたり音楽を聴いたりゲームをしたり、さまざまだと思います。私はできるだけ、そこにあるものを見たり聴いたり読んだりするようにしています。待合室にテレビがついていれば、できるだけテレビを見ます。飛行機に乗れば寄席や音楽を聴いたり、映画を見たりします。雑誌が置いてあればとりあえずさっと目を通します。もちろん自分でも本を持っていきますが、それは自分が読みたくて選んだものです。乗り物や待合室でのテレビや雑誌などは、たまたまそこで出会ったものであり、その時だからこそ見たり聴いたりできます。そういったものからは、意外と新しい発見やアイデア、知識などを得ることができるものです。
バルセロナ・オリンピックで銀メダルを獲った有森裕子選手、シドニー・オリンピックで金メダルを獲った高橋尚子選手は、いずれも小出義雄という有名なコーチが指導した女子マラソン選手です。小出監督は、彼女らによく「せっかくと思え」と言っていました。
「せっかく故障したんだから、今しかできないことをしよう」
「せっかく神様が休めと言ってくれているんだから、しっかり休もう」
そう言って、故障によって調整が遅れ、焦る選手の心を落ち着かせて前向きにするのです。すると選手たちは、故障した自分を責めることなく、焦ることもなく治療に専念できたというのです。
徳川家康は、武田信玄との戦に敗れて命からがらに逃げ帰った時、絵描きを呼んで「敗北して情けない姿でいる自分を描いてくれ」と頼んだそうです。そして出来上がった絵を自分の戒めとして、生涯大切にしたというエピソードがあります(『心が「ほっ」とする50の物語』参照)。
「難有り」という言葉があります。この言葉の漢字を逆さまにすると「有難い」となります。難しい時、苦しい時、辛い時こそ、感謝すべきこと、自分のためになっていることがあるという意味です。
この一年も、これからいろいろなことがあるでしょう。辛いことや苦しいこと、難しいこと、嫌なこともあるでしょう。しかしどんな状況に出会った時でも、「せっかくと思い」、「有難い」という気持ちを持って取り組めば、きっと大きな力になっていくに違いありません。