朝の心
心は心に語る
- 2017.02.02
- 朝の心
1月24日、教会ではサレジオ会の名前の由来である、聖フランシスコ・サレジオを記念します。
彼は1567年、フランスの貴族の家庭に生まれました。パリで勉強し、そこで神父になり博士号まで取りました。そんな彼が最も評価されていることの一つは、敵意に満ちた場所に柔和な心をもって入り、その人々の心を勝ち取ったということです。
彼が活躍した当時、カルヴァン派というキリスト教の一派がカトリックと対立して生まれました。その派が非常に強かったスイスのジュネーブという地域に、彼は「司教」という責任ある立場で送られたのでした。
はじめは、カトリックの司教というだけで、ジュネーブの中にさえ入れてもらえませんでした。というのも、それまでのカトリックの指導者たちは、敵対するカルヴァン派を非難し、ばかにすることで、カルヴァン派に移っていった信者たちを取り戻そうとしたのでした。しかし、それは相手をより頑なにさせるだけで、大きな成果を得られませんでした。しかし、フランシスコは、優しさと親切な心で相手に語りかけることによって、相手の心に自分のメッセージを伝えていったのでした。
ここで私が皆さんに伝えたいのは、彼がどれくらいの人をカトリックに引き寄せたかではありません。どのような態度で対立する相手に臨むかということです。イラクやアフガニスタン、クリミアなどの近年の数々の戦争が物語っているように、敵意のあるところに敵意で向かうとき、その結果残すのは、さらに大きな敵意と絶望です。
フランシスコ・サレジオはこうも言っています。「心は心に語る」。
心から語られる言葉に乏しいこのごろです。表面だけの取り繕った言葉、自分の立場だけを守ろうとする言葉、自己満足のみの言葉......。そこで、本当に優しく心に働きかける言葉が今必要とされているように思います。平和を求めるなら、まず自分の平和な心から出る言葉を相手に語りかけていきたい。フランシスコ・サレジオの姿から、そんなことを学びたいものです。
(サレジオ高専モーニングトーク集『夢をかたちに』から)