朝の心
本来無一物
- 2017.05.20
- 朝の心
日曜日の夕方、「ついに桜前線が北海道の釧路に到達しました」というニュースを聞きました。今年の桜の開花は1月下旬に沖縄からスタートし、約4ヶ月かけて日本を縦断したことになります。一方で、沖縄・奄美地方が梅雨入りしたというニュースを耳にしたのも先週末でした。小さな島国日本で、南は梅雨入り、北はようやく桜前線が到達という事実に、自然の豊かさを感じずにはいられません。この豊かさ一つひとつが関わりあって四季に富む豊かな環境や資源が造られ、私たちはその恵みの下で生きているのだと、つくづく思いました。
ところで、私たちの周りに、永遠に変わりなく存在するものはありません。あらゆるものは遅かれ早かれ滅んでしまう無常の世の中です。一切の出来事や様々なものは何かのきっかけで生じたりつくられたりしており、条件が一つでも崩れるとその物事も無くなってしまいます。
例えば私たちが毎日使っている文房具のシャープペンシルの仕組みを考えてみましょう。シャープペンシルは、本体のプラスチック、中心となる芯、バネなどの部品でできています。どれか一つでも欠けたり無くなったりすると、シャープペンシルとしての機能が果たせなくなり、用をなしません。
このように一切の物事は相互作用によって存在しており、他と無関係にそのものだけで存在して機能するものは無いのです。この考え方を、禅思想では「本来無一物」と言います(『心の杖ことば366日』参照)。 自然をはじめ、私たちの存在や周辺の様々なものは一つひとつ関わりあい、支え、影響しあっているのです。「私だけ」とか「我が物」という考えがいかに狭く、浅はかなものであるかに気づかされます。
高校生はもうすぐ高校総体があります(中学生はもうすぐ中体連があります)。3年生にとっては最後の大会です。メンバー一人ひとりの存在をはじめ、指導してくださる先生方や家族の支え、友だちの応援などが関わりあってこそ今があるのだということを、改めて胸に刻んでみてください。自分が、チームが、本来無一物であることを再確認し、このかけがえのなさに気づくことができれば、個人としてもチームとしてもひとまわり成長し、強い精神力で戦いに挑むことができるにちがいありません。