朝の心
『のーべるしょう』の誇り
- 2017.12.15
- 朝の心
皆さんは、今年のノーベル文学賞に日系イギリス人のカズオ・イシグロさんが選ばれたことを覚えているでしょう。日本にゆかりのある受賞者として、新聞やテレビでたくさん取り上げられていました。先日行われた授賞式の晩餐会の席で、イシグロさんが行ったスピーチが新聞に紹介されていました。
彼はまず、幼いころに長崎で母親から聞かされた「のーべるしょう」についての思い出を語ります。それは、長崎で原爆を経験した母親が、「のーべるしょう」というのは「へいわ」を促進するために作られたのだということを、「特別な感情」をもって話していたという思い出でした。
また、ノーベル賞を受けることで得られる誇りは、オリンピックで自分の国の選手がメダルを勝ち取ったときに感じる誇りとは違うものだと、イシグロさんは言います。ノーベル賞で得られる誇りは、自分が他の部族や国民より優れていることを誇ったりするものではない。むしろ、自分たちのうちの一人が人類共通の平和や進歩に素晴らしい貢献をしたことを知って得られる誇りだ。これは、人々の心をつなぎ合わせるものなのだと。
わたしたちは学校生活の中で、大なり小なりテストの番数や競技での順位などを気にしながら生きています。そして良い成績なら誇りをも感じます。もちろん、日頃の努力の成果を競い合うことは、互いに切磋琢磨して自分自身を伸ばすためにとても有効であることは言うまでもありません。しかし、もう一つ忘れてならないことは、その努力は自分の優秀さを誇るためだけのものではないということです。自分の身の周りをより良くするために、このクラスを、この学校を、そしていずれはこの日本を、この世界をより良いものとするために、今の私の努力があるということです。これを忘れたときに自分の努力は独善的なものになっていきます。みんなに貢献できる存在になりたいという強い思いが、いずれノーベル賞につながっていくのでしょう。
イシグロさんが幼いころに抱いていた「のーべるしょう」への憧れを、皆さんも持ってほしいなと思います。残念ながら分断と敵対が強調されている現代にありますが、皆さんは人類の平和を願って、そこに貢献してきたいという高い理想を持つ日向学院生となっていってください。