MORNING TALK
朝の心
新しい気持ちで
- 2018.09.26
- 朝の心
江戸時代、堺の町に吉兵衛という裕福な商人がいました。毎日忙しく、商売も繁盛していましたが、妻が寝たきりの病人になってしまいました。店にはたくさんの雇い人もいましたが、吉兵衛は妻の下の世話を他人には任せず、忙しい仕事の合間を縫ってすべて自分でやっていました。そんな様子を見て、ある人が「よく飽きもせず、なさっていますね。お疲れでしょう」と言いました。それに対して吉兵衛は、次のように答えたと言われています。「何をおっしゃいます。一回一回が仕始めで、仕納めでございます」と。つまり、吉兵衛は、単調でつらい日々の務めを単なる繰り返しとは思わず、一回一回を初めてそれにあたるような新鮮な気持ちで行い、なおかつ、もしかするとこれが最後になるかもしれないという気持ちで、心を込めて丁寧に行っていたというのです。
さて、秋は「勉強の秋」、「スポーツの秋」、「実りの秋」などと表現されるほど、様々なことに挑戦するのにとてもよい季節です。しかしその反面、部活動で行き詰まったり、成績が思うように伸びなかったりという壁にぶつかることもあるかもしれません。勉強でも部活動でもそうですが、苦しい時に自分を支えてくれる自信は、日々の努力の積み重ねからしか生まれてきません。日々の地味で苦しい努力を、いやいやしたり、機械的にするのではなく、吉兵衛のように毎回初めてのような新鮮な気持ちで、そして最後かもしれないと心を込めて行うことができれば、その積み重ねによって、わたしたちの毎日はさらに充実し、私たち自身もさらに成長していけるのだろうと思います。