朝の心
手塚治虫氏と本庶佑さんから学ぶこと
- 2018.10.27
- 朝の心
先日、高校生たちと一緒に乳児院でボランティア活動をしていた時のことです。私は一人の小さな男の子の手を取ってゆっくりと散歩していました。歩きながら男の子は、犬の置物を見ては「ワンワン」と指さし、急にしゃがみこんでは「石」と言って私に手渡します。階段があるとすぐ上りたがるし、空に飛行機を見つけると「ヒコーキ!」と声をあげます。とにかく目に見えるすべてに好奇心があふれ、一緒に歩いていた私は、彼が次に何を発見するのか楽しみながらの時間でした。
漫画家の手塚治虫がイースター島に行ったのは50歳の時です。小学5年生のとき科学雑誌でイースター島にある謎の石像・モアイの存在を初めて知り、一体誰が何のために作ったのか、文明の利器のない大昔、巨大な石像の数々をどうやって移動させたのか、その不思議さに胸をときめかせて以来の夢だったのです。このように手塚治虫は、自分が不思議に思ったり興味を抱いたりすると、あらゆる本を読んで調べ、時には実際にその場まで足を運びました。そうしていくうちに新たなアイデアが生まれ、新しい作品に繋がり、漫画を描き続けてこられたといいます(『みやざき中央新聞』2475号参照)。彼の漫画人生を支えていたのは、まさに好奇心と探究心でした。
今月のはじめにノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑さんは、研究の喜びとは「多くの人が石ころだと思って見向きもしないものを拾い、10年、20年かけて磨き上げ、ダイヤモンドにする」ことだ、と述べています(朝日天声人語10月3日)。また、研究では何を心がけているかという質問に「好奇心と簡単に信じないこと」だと回答し、「自分の目で確信できるまでやる。自分の頭で考えて、納得できるまでやる。それが基本的な姿勢だ」と語りました。
偉大な漫画家と科学者。二人とも、その始まりは好奇心からでした。好奇心をもって自ら調べる行動を起こし、深く考え問い続ける姿勢を貫いたのです。時に好奇心は道草になることもありますが、興味をもって調べ、本を読み、探究する時間は必ず自分の糧となります。二人の姿勢から学ぶべきことはたくさんありそうです。まずは好奇心をもって先生方や友だち、家族の話に耳を傾けてみませんか。そして日々の学習も、好奇心をもって取り組むことで、学びがさらに深まると思います。