朝の心
風をつかまえた少年
- 2019.09.25
- 朝の心
今日は、最近観た映画「風をつかまえた少年」を紹介したいと思います。実話に基づいた、素晴らしい映画でした。
舞台はアフリカ南東部の国マラウイにある小さな農村です。マラウイは世界最貧国の一つで、人口の2%ほどしか電気が普及しておらず、80%以上の人が農業で暮しています。主人公である14歳の少年ウィリアムの家も農業を営んでいて、貧しいながらも彼は学校に通っていました。ところが中学に入学後まもない2001年、マラウイを大干ばつが襲います。村では大飢饉が発生し、数千人の餓死者が出ました。彼も学費が払えなくなり退学処分になりました。それでも勉強がしたかったウィリアムは、学校の図書館だけにはこっそりと通い続け、『エネルギーの利用』という本に出会います。もともと科学が好きだった彼は、英語に苦労しながら辞書を片手に夢中になって読みすすめると、廃品置き場で材料を拾い集め、ついに風力発電を手作りするのです。そしてこれをもとに発電し、送水ポンプを稼働させ、干上がった畑に水をもたらし、とうとう村人たちを飢饉から救ったのです。
ウィリアムが二つ目の風力発電を作ったのは2006年のことです。するとその存在は地元の新聞に取り上げられ、奨学金を得た彼は、勉強を再開できることになりました。やがてアメリカの大学に進んで環境学を学んだ彼は、雑誌『タイム』の「世界を変える30人」に選ばれるまでになったのです。
少年ウィリアムのモデルになったカムクワンバさんは、「学ぶことをあきらめず、人生の選択を失わずにいられたのは、一冊の本が与えたくれた勇気のおかげだ。......本の中に描かれた風車の挿絵を見たとき、世界のどこかで誰かが作ったのなら、同じ人間である自分も作れるはずだと思えた」(「朝日新聞」8月29日参照)とコメントしています。映画の中で、ウィリアム少年が廃品置き場で材料を選び、あるものだけで工夫をしながら物を作り上げていくシーンを観ながら、どのように完成されていくのかワクワクしました。どんな状況にあっても学びたいという向学心と、人の助けを待つのではなく、自分から何とかしようとするたくましさに、心から拍手を送りたくなりました。