朝の心
聖フランシスコ・サレジオの説く本当の友情とは
- 2020.01.28
- 朝の心
二人の男が連れ立って旅に出ました。途中で一人が落ちていた斧を拾ってこう言いました。「これは私が拾った物だから、私のものにしよう」。するともう一人が口をとがらせて、「二人で見つけたのだから二人の物さ」と言いだし、喧嘩になってしまいました。ちょうどその時、後ろから斧の持ち主が飛んできて、「なぜ人の物を勝手に持っていくのだ!」とどなりつけました。驚いた二人は慌てて斧を投げ出すと、「俺は知らないよ」、「お前が拾ったんだ」などと言い合ったのです(『朝の心Ⅰ』参照)。
聖フランシスコ・サレジオは、友情について次のように言っています。「すべての人を大いなる愛で愛しなさい。しかし、特別な友情関係を結ぶのは、あなたと徳を分かち合うことの出来る人に限りなさい。その徳が本物であればあるほど、友情もより完全になります」(『フランシスコ・サレジオと共に歩む神への道のり』)。
徳とは、人間性を高めるもの、人間としてより善く生きていく能力のことを指します。すなわち本当の友情関係というのは、互いに刺激を受け合い、互いに人間として向上しよう、共により善い人間になろうと心から思えるような関係だと聖フランシスコ・サレジオは言っているのです。最初に紹介したたとえ話のように、自分のことばかり考えたり、困っている時に逃げ出したり相手のせいにしたりするのは、本当の友情ではありません。
さらに、この友情が互いのためでだけなく、周りの人や困っている人、悲しんでいる人のために向かう友情であれば、最高のものとなります。サレジオはこれを「霊的友情」と呼びます。つまり、「友情を育む中で何を分かち合うかで、その友情の質が決まる」ということになるのです。
皆さんは、友人たちとどのように友情を育んでいるでしょうか。互いに高め合い、励まし合い、より善い人間、より善い社会人へ向かって歩むような友情関係に近づけるよう、少しずつ心がけてみましょう。