朝の心
ネガティブ・ケイパビリティ
- 2020.05.27
- 朝の心
最近、インターネットなどによる個人攻撃がとても目立つようになっているようです。外出を自粛するように言われ、家でパソコンやスマホの画面を見る時間が多くなったり、見えないウイルスへの不安が誰かを追い込むことに駆り立てているのかもしれません。生活費を稼ぐためにやむを得ず開けている飲食店に「お前は人を殺す気か」と張り紙をするいわゆる「自粛警察」と呼ばれる人が登場したり、ツイッターで個人的な意見を上げた人に集中攻撃をして、その人を追い込む風潮が顕著になった気がします。それが人の命をも奪ったりしているのを見るのは、つらいですね。
作家で精神科医の帚木蓬生(ははきぎほうせい)先生は、そんな今の時代を生きる力に「ネガティブ・ケイパビリティ」という能力を挙げています。
帚木先生は次のように説明しています。ネガティブ・ケイパビリティとは「生半可な知識や意味付けを用いて、未解決な問題にすぐに答えを与えない。中ぶらりんの状態を持ちこたえる力」だそうです。「分からない」という状態に耐えることとも言えます。
先生は今の時代を、「ネット上で大量の情報が瞬時に飛び交う現代、中ぶらりんに耐えられない人が目に付くようになった」とも言っています。それが簡単にデマを信じてしまったり、事情も分からず他人を攻撃したりすることへとつながってしまうのでしょう。
分からない事実に急いで結論を求める社会は生きにくいと先生は言います。悩むことを嫌がり、想像力を使おうとしない人は直感で判断し、寛容さを失くして、他の人を排除することに抵抗感を抱かない。
先日の朝の心で、マリア様の生き方のお話がありました。マリア様の人生自体「分からないこと」の連続でしたが、彼女はそれに対して苛立ったりせず、それを受け止めて、そこにどんな意味があるのかを想像力を持ちながら考え続ける力がある人でした。
皆さんも、分からないことやちょっと変だと思うことに対して、すぐに結論付けたり、誰かを犠牲者にするような判断をするのではなく、想像力を使ってその意味を問うことができるような「ネガティブ・ケイパビリティ」を身に着けてみませんか。
(※参考:朝日新聞(4/12)「結論急がず、悩みに耐える 「ネガティブ・ケイパビリティ」のススメ 作家・精神科医、帚木蓬生さん」https://digital.asahi.com/articles/DA3S14439354.html)