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MORNING TALK

朝の心

キリンの首一つ分

2020.05.29
朝の心

コロナ関係の暗いニュースが続く中、東京の多摩動物公園で今年3月、キリンの赤ちゃんが誕生しました。動物園でキリンを見たことがある人は多いと思いますが、その首の長さや重さを実際にイメージできる人は少ないと思います。話によりますと、キリンの赤ちゃんは身長1.8mで、自動販売機ぐらいの高さがあります。成長すると、二階の窓から覗いてちょうど目が合うほどの身長になり、街を散歩すれば歩道橋の下をすれすれで通れる高さです。首だけでも長さ2m、重さ約150㎏で、それは横綱白鳳関と同じサイズだそうです。感染予防のため人との距離を取るように言われている今、ちょうどキリンの首一つ分を意識したらいいとキリン博士は言います。キリンの首一つ分と言われても、正直ピンときませんが。

この話は、キリン研究家の郡司芽久さんの記事です(朝日新聞参照)。郡司さんは時おり、「その研究って、何の役に立つのですか」と尋ねられるそうです。そもそも研究や学問とは、役に立つ立たないといったものさしで測れるものではありません。博物館には「三つの無」の理念「無目的、無制限、無計画」が根付いていると言われています。将来どんなものが役に立ち、必要とされるかわからない世の中で、目先の価値や短絡的な利益の都合ばかりで研究や学問をし続けることは、多様な可能性をつぶし、未来への遺産を奪ってしまうことになるでしょう。

芸術の世界も同じです。芸術の鑑賞では「わからない」「かなわない」といった不可能性を体験することの方が大事だと、芸術家の小山田徹さんは言います。そういった体験にうちのめされ、それを楽しむ「嬉しい敗北」から出発してこそ、人は前に進めるということです(「折々のことば」参照)。kokoro1.jpg

ようやく通常どおりの学校がスタートしました。学校には得意な科目だけでなく苦手科目もあるし、楽しいばかりではなく、時には嫌なこともあります。また気の合う仲間もいれば、気の合わない人が周りにいるかもしれません。そういった環境で学ぶのが、学校です。だから学校に来ることに価値があるのです。皆さんには、目先の価値や都合では計り知れない未来の可能性が限りなくあるからです。

今まさに青春時代を過ごしている皆さん、どうか何事にも積極的に、前向きに関わってみてください。きっと将来の自分を支える力になります。苦手科目への努力やさまざまな体験、そしてあらゆる場面でのたくさんの人たちとの関わりは、やがて大きな宝となっていくことでしょう。

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