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MORNING TALK

朝の心

世界一偉大な知恵の持ち主

2020.07.22
朝の心

今日は「世界一偉大な知恵の持ち主」についてのお話をしましょう。

ある大きな町の近くに小さな村がありました。そこには一人の未亡人が息子と一緒に、質素だけど小ぎれいな家に住んでいました。来る日も来る日も彼女は畑を世話し、12羽の鶏を飼い、洗濯などの家事をしていました。

ある日、落ち着かない様子で息子が彼女に言いました。「僕はもっといい地位につきたいんだ。だから文化をもっと知り、特に知恵を獲得しなければいけない。僕は世界で一番いい先生を探してくるんだ!」重苦しい心で彼女は息子に別れを告げました。もとより彼を引き留めることはできませんでした。なぜなら、彼はまだ人生を知らず、学校で教えられたことは役に立たないものと思っていたからでした。

若者は自信に満ちあふれて出発しました。そして方々の大学の最高の先生に会いましたが、本当の知恵を教えてくれる人は一人もいませんでした。

ある日、一人の老教師が彼に言いました。「お前さん、もし本当の知恵を知りたいなら、山に行きなさい。山の上には大聖堂があり、そこに本当の偉大な知恵をもった修道士たちがいる。」若者は出発しましたが、道はとても険しいものでした。

数日後、ある小屋に着き、そこで一人の隠遁者に会いました。隠遁者は彼の行き先を聞くと、こう言いました。「その道はまだまだ険しく長い。それに、あそこで何年も聖なる言葉を繰り返し唱えている人間に、どんな知恵や悟りがあるって言うんだ。帰りなさい。この世の最も偉大な知恵はあなたの町の一人の人が持っている。2つのしるしでその人が分かる。その人は手に弱々しい炎のランプを持ち、スリッパを左右逆に履いているよ。」

若者は驚きましたが、その言葉に従って自分の町に戻りました。朝から晩まで、道行くすべての人を観察しましたが、誰一人として隠遁者が言ったような人はいませんでした。夜遅く、自分の家に着きました。恥ずかしそうに小さく扉を叩きましたが、何の返事もありません。年老いた母親のことが心配になった若者は、さらに強く扉を叩きます。「お母さん、僕だよ!扉を開けて!」

やっと中から床を引きずるような足音が聞こえ、扉が開きました。彼の前には、手に炎がゆらゆら揺れるランプを持ち、急いでいたので左右逆にスリッパを履いた母親が立っていたのでした。

皆さんの人生の先生は、案外身近にいるのかもしれません。身近なものに価値を見出せる人はもっと大きな世界にも開かれていくことでしょう。

(il Bollettino Salesiano7・8月号より訳出・編集)

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