朝の心
つぶやきは人の心を凍らせる
- 2020.10.02
- 朝の心
一人の旅人が長い旅を終え、故郷に帰ろうとしていた時のことです。途中見つけた井戸で水を飲むと、自宅にたどり着く前にもかかわらず井戸端で眠り込んでしまいました。あまりにも疲れていたのか、旅人は今にも井戸に落ちそうです。ついに落ちようとした寸前に神様が現れて、旅人を起こしてこう言いました。「もう少しで井戸に落ちるところであったぞ。もし落ちていたら、お前は自分の不注意を棚に上げて、『オレはどうしてこんなについていないんだろう』『この世に神なんてあるもんか』などと言って、私を呪っていただろう」(『ヘタな人生論よりイソップ物語』参照)。
この話は、自分がうまくいかなかったり調子が悪かったりした時に、つい相手や環境のせいにしてしまう傾向をよく言い表していると思います。「教えてもらっていないからできない」「こんなに頑張っているのに親や先生は認めてくれない」「もし家がもっと近かったらゆっくり勉強ができたのに」などです。
少し前の話ですが、今年7月4日、プロサッカーの遠藤保仁選手がJ1通算最多出場を達成しました。遠藤選手と言えば、プロとしてデビューしたチーム横浜フリューゲルスがそのシーズンで消滅。2000年シドニー・オリンピックでは予備登録にとどまり、現地でスタンド観戦。2002年日韓ワールドカップでは代表から外れます。その後は代表に選ばれるものの、レギュラーが定着しませんでした。ドイツワールドカップではフィールド選手で唯一出場機会が与えられず、2008年北京オリンピックではウィルス感染症にかかって代表を辞退しました。しかしながら三十歳でようやく頭角を現し、四十歳になった今では日本代表を含めた公式戦出場は1000試合を超え、名実ともにチームの要となっています。不運の重なる経歴で悔しさが長く続いていた分、どんな状況でも決してあきらめず、理不尽な現実にも耐えてきたからこその結果であると思います。
間違いや失敗の原因をきちんと見つめ、改善していくことは必要ですが、どんな環境でもどんな状況でもまずは全力を尽くしてやってみて、チャレンジを続けることは、それ以上に大切なことです。
ドン・ボスコは言っています。「つぶやきは人の心を凍らせる一番悪質なペストである」