朝の心
ゆるし
- 2022.09.22
- 朝の心
今年度の学校目標「なにごとも愛によって行おう」という言葉を聞くと、どんなことにも愛をこめて行いましょうとか、みんなが面倒だと思うことを率先して行いましょうという内容が連想されがちですが、今日はもう一つ「ゆるす」ということについて考えてみたいと思います。
2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが起き、ハイジャックされた2機の飛行機がワールドトレードセンタービルに激突し、建物を破壊しました。そのテロに巻き込まれ、尊い命を奪われた人は約3000人にのぼりました。その後、ビルのがれきをすべて撤去し広い空き地となったビルの跡地「グラウンドゼロ」には、亡くなった方を悼み、たくさんの花が供えられ、多くのメッセージが寄せ書きされていきました。
ところで、テロ直後に寄せ書きされたメッセージには、テロリストに対する報復を求める声、アメリカ人の団結を呼びかける声がほとんどでした。無差別の暴力によって多くのアメリカ人の尊い命が奪われたのですから、当然と言えば当然です。しかし、テロから1年ほど過ぎたころから、怒りに満ちたメッセージはだんだんと少なくなり、平和を求めるメッセージが大半をしめるようになりました。そんな中で、1つのメッセージに、私は大変心を打たれました。それは"forgive us, as we forgive"『私たちをゆるしてください。私たちもゆるしますから』というメッセージでした。平和の実現に向けて相手の暴力をただゆるすと言うのではなく、自分たち自身を振り返り、長い歴史の中で自分たちアメリカ人が相手を傷つけてきたことを深く反省し、謝罪しているのです。自分たちは悪くないけどゆるしてやろう、という態度は本当のゆるしではありません。自分たちもゆるされるべき存在だと自覚し、傷ついた相手の心まで思いやることができるときにはじめて、本当のゆるしと平和が実現していくのだと思います。