朝の心
愛の作用と反作用
- 2022.09.27
- 朝の心
今日は私の思い出の先生を一人紹介したいと思います。高校一年生の時の理科の先生で物理を教えてくれました。その先生は細身のおじいさんで、いつも白衣を着てゆっくりクラスに入ってくると、「はーい、みなさん」とやわらかいゆっくりとした声でニコニコしながら授業をしていました。高校一年生は科目も多く私も勉強についていけるか心配していたのですが、その先生のおかげで緊張がほぐれ楽しく勉強ができたと思います。
ある日、授業で「作用と反作用」の話をしていた時のことです。作用と反作用とは壁に向かってボールをぶつけると跳ね返ってくるように「あるものに力を加えると、必ず同じ大きさの逆向きの力が返ってくる」という法則なのですが、先生は本当に細いこぶしを振り上げ「こう見えても、昔は私も怖かったんだよ~。このこぶしで何人もの頭をゴツンとしてきたんだ~。」と自慢話をし始めました。「本気でなぐったら先生の腕が折れそうだな」と心の中で突っ込んでいると、「でも、先生はいつも殴った後は必ず生徒に伝えていたことがあるんです。痛がってる生徒に対して『痛いか?そうだろ。でもな、俺のこぶしもお前の頭を殴った同じ力でお前の頭から殴り返されているんだ!』はーい、これが作用と反作用です。」クラスは笑い声に包まれました。
この話が実話かどうかは定かではありませんが、「お前も痛いだろうが、俺も痛い」ということは真実だと思います。決して暴力をふるっていいというわけではありません。でも、何か注意をしたり、指導をしたり、相手の気を悪くすること、傷つけてしまう可能性のあることをあえてするのは相手を大切に思えばこそ辛い心が痛むことなのです。
人を愛するということは誰も傷つかないということではありません。マザーテレサが「愛には痛みが伴う」と表現したように、本当に相手のことを思って行動するときには、自分の何かを犠牲にすることになるのでしょう。心の反作用を恐れずに愛の作用を実行できる人になっていきたいと思います。