朝の心
そのままの味
- 2023.10.04
- 朝の心
この夏、中学3年生は技術の時間にミニトマトを栽培しましたが、今日は管理栄養士であり医学博士の本多京子さんのトマトにまつわるお話を紹介したいと思います。
本多さんのお母さんは戦時中にあったあることが原因でトマトがどうしても食べられなくなってしまったそうで「トマトを食べればお一万円おこづかいをあげるといわれても食べない!」というのが口癖だったそうです。本多さんの娘さんはそんなおばあちゃんの真似をして幼い時は全くトマトを食べませんでした。本多さんは好き嫌いなく食べられれば栄養バランスもよくなり、誰とでも楽しく食事ができて人生が楽しくなると考えていましたが、娘のトマト嫌いだけはどうにもならず困っていたそうです。ところがある日、「お母さん、トマトは丸かじりが一番なのよ!」といいだし、丸洗いのトマトをぺろりと食べてしまったのだそうです。
後日、不思議に思って保育園の先生にその話をしたところ、意外な原因がわかりました。ある日、その先生が朝寝坊をしてお昼を準備する時間がなく、冷蔵庫にあったトマトをそのまま持っていって、塩をつけて丸かじり。不思議そうに見つめる子どもたちに「トマトは丸かじりがいちばん!」と言ったのだそうです。本多さんはこの話を聞いて、今までは料理するとき「あれこれ手を加えて見た目や味を変化させたり、栄養効率を考えたりしがちでしたが、何もせずそのまま食べるのも大きな意味がある」ということを学んだそうです。
私たちは普段見た目に気を使い、自分をよりよく見せようと飾りつけや味付けをして生きています。でも、トマトやキュウリのように本来私たちはあれこれ味付けをしなくても、一人一人それぞれによい素の味があるのではないでしょうか。他の人を見た目で判断せずにその人そのものの味を知るように努める姿勢を大切にしたいです。また私たちを飾りつけるものだけでなく、植物にとっての土や水、肥料、日当たりなど私たちそのものを育てる要素にもっと気を使いながら、素材の味で勝負できる大人になりたいと思います。